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【春日部市】相続による生産緑地解除の手続きと売却の方法

 
多くの生産緑地で2022年に指定後30年が経過し指定の解除ができるようになるのは既にご承知かと思います。

しかし、それ以前にも指定を解除できる方法があるのをご存じでしょうか?

この記事では生産緑地3つの解除要件の中の、2.農業の主たる従事者の死亡を原因とした生産緑地の指定解除手続きと、その後の売却で最も高く売る方法について解説しています。
コロナ禍の現在、意外にも建売業界は好景気のようです。そのため仕入れ価格が高めでも購入したいという業者が多いので、今が売り時かもしれません。

生産緑地の指定解除はあなたにとって初めての経験だと思いますので難しく感じているかもしれませんが、1つづつ進めていけば大丈夫です。
この記事では私が行った指定解除と売却の実体験をお伝えしていますので是非参考にしてみて下さい。

生産緑地3つの解除要件

春日部市の指定解除申請は令和4年12月1日から

 旧庄和町を除く春日部市では、平成4年12月1日に生産緑地の指定がされていますので、解除申請は令和4年12月1日から可能となります。
解除する要件は3つあり、いずれかにあてはまれば指定解除の申請を行うことができます。

生産緑地3つの解除要件

1.生産緑地の指定から30年経過すること。
2.農業の主たる従事者の死亡。相続発生後何の手続きもしていなかった場合も含みます。
3.農業の主たる従事者の故障。農業を続けることができないような重大なケガや病気であることです。

 なお、ネットの記事を見ていると自治体によっては主たる農業従事者の死亡から1年以内に限り解除申請できるとの記事もあるようですが、春日部市ではそのような制限はありません。まずは公園緑地課の担当者に相談してみましょう。

生産緑地についてのおさらい

 ではまず、生産緑地について簡単に確認しておきましょう。
生産緑地とは市街化区域内農地の緑地としての機能を活かし、計画的に農地を保全していこうとする制度です。

指定を受けた生産緑地には固定資産税と相続税の優遇があり、固定資産税については税額が約1/100~300程度に減額されています(300坪1000円程度!)。
相続時にも相続税の優遇がありますが、こちらは5%+α程度の評価減しかありませんので、それほどメリットとは言えないかもしれません。

 しかしこのようなメリットがある一方で、生産緑地内では建物の建設や売却などの行為が規制され、指定から30年間農業経営を続けることが義務づけられます。

多くの生産緑地は平成4年に指定を受けていますので、来年、令和4年の12月1日で30年経過となり、指定解除の申請ができるようになります。
また、引き続き固定資産税の優遇を受けるために、特定生産緑地として10年間生産緑地を延長する制度もあります。こちらについては市からの説明会もあったと思いますので、そちらをご参照ください。

なお、旧庄和町の生産緑地は春日部市と合併した平成17年の指定ですので、まだ解除が可能になるまでには時間がかかります。

自分でもできる指定解除の方法と必要書類

生産緑地買取の申出に必要な添付書類

 生産緑地の指定解除(行為制限の解除といいます)手続きを司法書士や行政書士さんに依頼することもできますが、難しいことではありませんので自分でやってみましょう。
生産緑地の指定解除の手続きとは、市に対して生産緑地である農地を時価で買い取ってくれという、買取の申出をすることです。

その申出に必要な書類は次の通りです。

生産緑地買取の申出必要書類

1.生産緑地に係る農業の主たる従事者についての証明(原本)
2.案内図(下記主たる従事者の証明で使ったものと同じ)
3.公図(下記の主たる従業者の証明で使ったもののコピーで可)
4.登記簿謄本(下記の主たる従業者の証明で使ったもののコピーで可)
5.都市計画図(当該地を中心にA4カラーコピー:春日部市「かすかべ オラナビ」利用)
6.代理人を頼む場合は委任状

2.~6.はすぐに入手することができますが、1.については少し時間が必要です。

農業の主たる従事者についての証明書取得まで約1か月

 生産緑地の買取の申出は春日部市公園緑地課(庄和総合支所2階)に対して行いますが、添付書類の1つに、
生産緑地に係る農業の主たる従事者についての証明(原本)」というものがあります。
この証明書は春日部市の農業委員会が発行するもので、証明願いを出してから発行まで約1か月かかります。
証明願いの用紙は農業委員会に行ってもらうか、FAXでも送ってもらうことができます。この証明書を取得するためには下記の通り添付書類が必要となります。

農業の主たる従事者についての証明願い必要書類

1.住民票(春日部市役所で入手:申請時点で3か月以内のもの)
2.土地登記簿謄本(原本:春日部の法務局で入手:全部事項証明書のこと)
3.案内図(googleマップや春日部市「かすかべ オラナビ」等のプリントアウトで可)
4.公図(原本:春日部の法務局で入手)
5.死亡した方の住民票の除票(春日部市役所で入手:申請時点で3か月以内のもの)
6.代理人を頼むときは委任状
7.認印

以上を用意して農業委員会(春日部市役所第3別館)に持っていきます。

農業委員会では当月分は5日が締め切りとなり、現地調査などを行った上、月末に証明書がでます。
このため5日の締め切り日を過ぎてしまうと、証明書の発行が翌月末となってしまうため注意してください。

買取の申出から指定の解除まであと3か月

 さて、証明書が入手出来たら、書類を全て揃えて公園緑地課に買取の申出をすることができます。

買取の申出を出し、あとは3か月待てば生産緑地の指定が解除(行為制限の解除)となります。
つまり、準備を始めてから4か月、場合によっては5か月近くかかるということになります。

生産緑地のルールでは、市による買取検討や、買い取る農家の斡旋等を行うことになっています。
しかし生産緑地の縛りがある農地を宅地並みの時価で買い取る必要があるため、買取が成立することはほぼ無いようです。

こうしてようやく普通の農地として自由に活用することができるようになりました。
ただあくまで普通の農地になっただけですので、農地以外で活用したい場合は目的によって農地法の4条、あるいは5条の届出が必要となります。

解除申請を行う際の準備と注意点

 以上で生産緑地の解除が完了しましたが、解除申請に際していくつか注意する点があります。

1.来年以降は固定資産税が跳ね上がります。売却をお考えの場合には早めの行動をお勧めします。

2.通常広い土地を売却する場合、購入者側の条件として確定測量が必要となります。
 確定測量とは、隣接する土地の所有者、及び土地が接する市道の所有者である春日部市と境界確認を行い、境界の確定を行うことです。
 ここで隣地の方の確認が取れないと売却が難しくなる場合がありますので、解除申請を出す前に確定測量を行っておいた方が良いでしょう。

3.納税猶予を受けている場合は要注意。今回の記事は相続を原因とした解除方法を解説しているので問題ありませんが、その他の原因(上記解除要件の1.や3.)の場合で、納税猶予を受けていた場合には注意が必要です。
 納税猶予を受けていた生産緑地を解除してしまうと、猶予されていた相続税額と、期間に応じた利子税の支払いが必要になってしまいます。

買取業者の探し方と生産緑地売却の注意点

見積りは最低3社から取る。買取価格は1000万円単位で違う

 売却に関しては基本的に不動産業者に相談となりますが、自分で売却先を探すこともできます。但し、複雑な不動産取引を個人で行うことはハードルが高い為、不動産業者に依頼することをお勧めします。
あるいは、見積りの取得までご自分でやってから、不動産業者に相談し、仲介手数料の交渉をおこなった上で任せてもいいかもしれません。

具体的な方法としては次のように3つの方法があります。

1.ネットの一括見積サイトを利用して数社から見積りをとる
2.春日部市で建売分譲を行っている業者に直接電話をして見積りを出してもらう
3.不動産業者に依頼して買取業者を探してもらう

いずれにしても1社に任せてはいけません。買取業者によって1000万円単位で違うこともありますので、具体的な見積りを最低3社から取得した方が良いでしょう。

コロナ禍の現在、意外にも建売業界は好景気のようです。そのため仕入れ価格が高めでも購入したいという業者が多いので、今が売り時かもしれません。
相続後そのままになっている生産緑地があるのであれば、来年の期限を待つのではなく早めに解除を行い売却を検討してみるのも良い時期かと思います。

農地法5条の届出と生産緑地売却の注意点

 生産緑地の制限は解除されましたが、農地を活用するためにはまだ農地法による制限があり、市街化区域の農地には目的によって次の3つの届け出があります。

農地活用のための農地法届出

1.第3条の届出:農家に農地としてする売却する場合(権利移転のみ)
2.第4条の届出:自らアパートなどを建築し、宅地として活用する(農地の転用)
3.第5条の届出:建売業者等に宅地として売却する(農地の転用+権利移転)

 売却する場合は3.の第5条の届出となりますが、これは売主と買主が連名で出す書類となりますので、売却先が決まってから行います。

なお、建売業者の残金決済条件は計画している棟数の建築確認が取得できてからということも多いので注意が必要です。
建売業者に売却する場合、生産緑地の解除申請の期間が4~5か月(並行して確定測量が約2~3か月)、続いて建売業者による宅地造成工事や開発申請など、すぐに動いても決済まで10か月近くかかります。

つまり相続税の申告期限である、相続発生後10か月以内に間に合わなくなる恐れがあります。
このため、現金、もしくは生産緑地指定されていない別の農地などを売却して相続税の手当てをする必要もでてきますので、税理士や不動産業者等との綿密な相談が必要です。

本来であれば、これらの対策は親(被相続人)がまだ元気なうちに行う必要があるものです。もし将来の為にこの記事を読んで下さっているのであれば、すぐにでも準備を始めることをお勧めします。

手続きと売却は違う。困ったときは適切な専門家に相談

 この記事では生産緑地の解除申請は自分で行う前提で書いていますが、ちょっと難しい、面倒と思われたら専門家(司法書士や行政書士)に依頼することもできます。
但し、いわゆる士業の先生は法的な手続きについては頼りになる専門家ですが、売却のことまでは考えてくれません。まずは総合的に相談できる相続コンサルタントや相続に詳しい不動産業者に相談するのが良いでしょう。

相続コンサルタントに相談する

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