「遺言は資産の承継であると同時にあなたの人生と想いを伝えるもの」と言われます。
余程単純な財産分与ではない限り、相続の争いが起きないように、あなたにも是非遺言書を作成していただきたいと思っています。
相続財産を「平等」に分けるのは不可能
遺産を相続人で分配するための優先順位は次の通りです。
1.遺言書による指定
2.遺産分割協議による話し合い
3.法定相続分に従って分ける
- 遺言書による指定
- 遺産分割協議による話し合い
- 法定相続分に従って分ける
遺言書でよくある失敗は、「各相続人に1/3づつ」とか「仲良く平等に分けてくれ」といった、具体的な財産の指定がないことです。
遺産の全てが現金と言うケースは少なく、大抵は不動産が絡みますので、この時点で法定相続や均等な分配は難しくなってきます。
仮に全ての遺産が現金であったとしても単純には行きません。「平等」の定義が人によって違うのです。
普段の関係では問題ないかもしれませんが、お金が絡むと状況はだいぶ変って来ます。
自分だけ「得をしたい」というより、「損はしたくない」という感情が多いようです。
葬儀や各種死後の手続きが終わり、具体的に財産分与の話が始まると色々な思いや現実が衝突します。
表面的に仲が良いと思われている家族でも、トラブルの基が何もないというケースは少ないものです。
中にはお通夜の席から罵り合いが繰り広げられてしまうことも珍しいことではありません。
争いの発端は、他の兄弟と比べて幼いころから差別されていたと思い込んでいる感情であったり、生前の介護、生前贈与、孫への教育資金援助など様々です。
キーマンであるあなたがいない状況では、それぞれが自分の考えや過去のいきさつなどからきた「平等」をぶつけ合うことになってしまいます。
このようなケースで役に立つのが遺言書です。
多少の不平等はあっても、遺言書の指定による分配が最優先ですから遺産分割協議も必要なくなる建前です。
しかし争う相続では単純に事は終わりません。
遺言内容を書くだけでは争族を防げない
遺言書はあなたの想いを伝えるものですが、受け取る側の想いや思惑もあることを理解する必要があります。
被相続人と相続人、あるいは相続人同士の過去に何らかの事情がある場合には尚更感情に配慮してほしいと思います。
遺言書の内容によっては他の相続人への攻撃や、そもそも遺言書自体が無効だという主張がでてくることもあります。
また、遺言書があっても相続人全員が合意できれば分割協議書を作成してもよいことになっていますので、一からやり直しを要求される場合もあります。
このように、遺言書の存在が争いの元になってしまうことがないようにする為に、どのような相続準備をしたら良いのでしょうか。
争族を回避する為の遺言書の作り方
争族を回避する為の遺言書の作り方として最も有効なことは、「家族会議」を開催して、遺言内容について相続人全員の合意を取っておくことです。
あなたとあなたの家族が皆元気で良い関係のうちに合意を取っておくことができれば、相続発生後の争いはかなり防ぐことができることでしょう。
そして、遺産分割の内容も大切ですが、なぜそうしたのか、あなたの気持ちを伝えることも大切です。
遺言は資産の承継であると同時にあなたの人生と想いを伝えるものです。
「言わなくてもわかる」ではなく、「言うことで伝わる」。
子供達への愛情には差がないこと、すべての関係者への感謝の言葉などを直接伝えたり、遺言書の付言事項に記しておくことも重要です。
こうすることでかえって家族の絆が強固になるきっかけにもなります。
あるいは事前の合意をとることが難しく、複雑な事情や相続人同士の関わりを持たせたくないといった場合には遺言執行者を指定するという方法があります。
こうすることで、相続人に代わり遺言執行者が手続きを進めてくれますので、相続人同士の感情がぶつかるといった事を減らすこともできます。
なお、特定の相続人に偏った遺言や相続人以外に遺贈がある場合は、公正証書で遺言書を作ることを特にお勧めします。
公正証書遺言というのは法律のプロである公証人に遺言書を作ってもらうものです。そしてその原本は公証役場に保管されます。
自筆証書遺言では破棄や改ざん、有効性の争いなど先々の不安が残りますので、公正証書遺言が安心です。
まとめると具体的には以下のような対応を行っておけば安心できるのではないでしょうか。
- 財産と負債を全て洗い出す
- 相続人の状況も考慮して配分を考える。理想的には家族会議を開催し、合意した内容に基づいて遺言書を作成する
- 遺言書内の付言事項やエンディングノートで、大切な妻や子供達への想いを綴っておく
- 遺留分を侵害する内容となる場合は資金の手当てをしておく
- 遺言執行者を指名する。
- お墓を引き継ぐ人を決めておく
- 二次相続まで含めた分配も考慮する。あなたと奥さん二人の遺言書を一緒に作る
- 状況が変わったときには遺言書の内容を修正する
遺言書は一度書いて終わりではありません。状況が変わったときに対応しておかないと、遺言が思った通りにならないこともあります。
このようによく考えて遺言書を作る過程で、書く側も気持ちの整理がつき、家族との関係を見直す機会にもなります。
その結果、
・遺産の整理ができる
・家族への想いも再確認できる
・家族関係が良好になる。
・自分の為に遺言書を作成する。セカンドライフを考える切っ掛けになる。
など、老後の生活にも良い影響がでると思います。
以上争族を回避する為の遺言書の作り方という大きなテーマで、必要と思われることをお伝えしましたがいかがだったでしょうか?
スムーズな遺産承継のために遺言書はとても有効な手段です。
しかし、相続対策は単に一つのアイデアだけを実行してしまうと総合的に見て逆効果になってしまう場合もあります。
司法書士や税理士の先生はとても頼りになる「相続手続き」の専門家ですが、生前の「相続対策」の専門家というわけではありません。
争う相続対策では、相続全体の事がよくわかっている相続対策の専門家に相談することが重要です。
相続対策はすぐにできるものもありますが、大抵は時間をかけて準備する必要があるものです。
そして準備する内容も各家庭の事情によって様々です。
このため、あなたとあなたの家族が皆元気で良い関係のうちに相続対策を考えていく必要があります。