相続の遺産分割について、親が元気なうちにきちんと話し合っていなかったため、各家庭の事情から争族になってしまった。
どんな相続対策をしておけばこのような事態を避けることができたのか?
〇家族構成
・父は3年前に他界。今回母が亡くなった。
・子供は兄と妹。それぞれ家庭を持ち子供もいる。
・兄家族は実家で母と同居。
・妹は夫の勤務地である大阪で持ち家の一戸建て住まい。
・妹が嫁いだ後も交流はあり、仲の良い家族。
〇相続財産
・実家不動産 時価1500万円
・現金 500万円
の合計2,000万円
・父が亡くなった時に母が全て相続したもの
・遺言書は無し
〇兄妹それぞれの事情、思い
・兄:今後のお墓の管理や法事一切は自分が取り仕切るため、今住んでいる実家の不動産は自分が相続する。
妹は大阪で家庭を持っているので、現金を分ければいいだろう。昔両親が元気な時にもそんな話になっていたし。
・妹:兄には言ってなかったけど主人が会社をリストラされ、金銭的に苦しい。
子供たちも大学生と高校3年生。授業料の支払いも一番大変な時。
法的には自分にも権利があるし、半分の1000万円を貰えるように言ってみよう。
〇法的な判断
・背に腹は代えられず、妹は兄に1000万円の相続分を主張。
兄には支払いできる現金がないため争族に発展。
・法的には妹の要求が正しく、兄が不動産をもらう以上、妹には現金1000万円の支払いが必要となる。
〇どんな相続対策が必要だったのか
・父が元気な時に相続の事を家族全員できちんと話し合い、兄の立場と役割を確認し、その結果を遺言書にしておく。
・遺言書の付言事項で、困ったときには兄妹助け合い、仲良くやっていってほしいと、親としての想いを遺す。
・妹の遺留分対策として、父あるいは母が妹のために、兄が受取人となる生命保険に加入する。
・親死亡後兄が受け取った生命保険を実家不動産の代償金(または遺留分)として妹に渡せるようにしておく。
言葉の解説
※遺留分とは・・・例えば遺言書で相続財産全て特定の人に相続させるとあったとしても、法定相続人には最低限もらうことができる権利があります。基本的には法定相続分の1/2。今回の例では500万円が遺留分となる。
しかし、今回遺言書はなかったので、妹には法定相続分である1000万円をもらう権利があります。
※法定相続分・・・遺言書、相続人全員の話し合いである遺産分割協議でも分け方が決まらない場合、妻や子、親、兄弟には法定相続分と言う割合が法律で決まっています。割合は亡くなった被相続人との関係で決まっています。
今回のように相続人が子だけであれば人数で頭割り。妻が存命ならば妻が1/2、子が1/2を人数で頭割りとなります。
※代償金とは・・・特定の遺産も貰う代わりに、他の相続人に合意したお金を払うこと。
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